REWORKが拠点を置く、浅草橋のシェアオフィス「Un.C. -Under Construction-」は新しいオフィスの実験の場として、日常的にあらゆるイベントが行われている。先日は、法政大学大学院のデザインスタジオの特別授業として、REWORK編集長・馬場正尊が「ワークプレイス」をテーマに講義を行った。その一部をお届けしたい。
講義のテーマは「ワークプレイス」として、馬場正尊は建築家としてオフィスの在り方に興味を持った経緯を振り返った。
さかのぼること11年前、きっかけはとある倉庫物件だった。無機質で巨大な倉庫をリノベーションして、静岡に本社を持つ靴の製造・輸入販売メーカーの東京支店をつくる案件だった。
心地いい空間は柔軟な発想を引き出し、さらには人が訪れたくなる場所となるのではないか。そんな仮定のもと、大勢で使うリビングルームをイメージし、フローリングを広く敷いた上にガラスのキューブを入れた。まるで遊び場のようなオフィスだ。
当時、とあるオフィスデザインの賞にエントリーするも、視察に来た審査員たちは「ここはオフィスではない」として、エントリーから外されてしまった。
ところが、どうだろう。靴の輸入元であるヨーロッパ本社の担当者がオフィスを訪問した際、このオフィスデザインを採用する会社の思想に感銘を受け、その企業が日本で唯一の総代理店に決まったという。視点を変えると、ここはクリエイティブなオフィスと映ったのだ。
かつて視察で訪れた海外の風景も、働くこと、オフィスについて考える大きなヒントとなった。
Google、Dropbox、Twitter、Pinterestなどのオフィスでみられた、食堂でプレゼンをする風景や、おもちゃ箱のようなインテリア、業務空間とくつろぎの空間が溶けむ心地の良さ。世界の先端を走るIT企業のオフィスは、どこも企業の思想を雄弁に語っていた。
ちなみに、Un.C.はニューヨークのブライアントパークで出会った光景から着想を得ている。人々が自由に多様に活動するも、各々を尊重した一体感がそこにはあった。公園とオフィスは似ている。その思考から、オフィス作りのプロジェクトは始まった。(詳しくはこの連載から)
ここでもう一度「ワークプレイス」とはなんだろう?と考える。
IT化が進み、スマートフォンやタブレットが登場し、仕事は場所から解放されていくものだと思っていた。ところが、実際は逆なのかもしれない。自由になったいまだからこそ、改めて「場所」つまりオフィスの価値が問われているのだ。
一説によると「働く」という言葉は時代とともに変化していくという。
かつて、働くことは「labor(肉体労働)」と言われた。それが「work(業務・作業)」に変わった。そしてこれからは「play(創造・発想)」に近づくのではないだろうか。
生産性を向上させるためにこそ、遊ぶような空間が必要なのかもしれない。
未来には確実にAIが人間の能力を超える時代がくる。俗にいう2040年問題だ。
30年先に価値がある仕事はなんだろうか。そのときに求められるオフィスとは一体どんな姿をしているのだろうか。
馬場は学生たちにそんな問いかけをして講義を閉じた。