REWORK

新しい働き方 / 営み方を実践するメディア

社内スペースを開放し、イノベーションを生む新しい働き方。

2016年10月、ヤフー株式会社が「東京ガーデンテラス紀尾井町」に本社を移転した。目指したのは、働く場所だけでなく、「働き方」をも変えること。その象徴となっているのが、同社がオープンコラボレーションスペースと呼ぶオフィス内に設けられた日本最大級のコワーキングスペース「LODGE」だ。社内スペースでありながら、社外にも開放された空間が生み出す、新しい働き方とは。

社内に設けられた広大なワンフロアに、外部利用者が集う。コンセプトは「『!』を生み出す場所」。
company profile

ヤフー株式会社

業種:インターネット上の広告事業、イーコマース事業、会員サービス事業 など

創立年:1996年1月

入居時期:2016年10月

社員数:6,330人(2018年3月31日現在)

 

オフィスに設けられた、社員と社外が交わる“情報の交差点”。

LODGEがあるのは、東京ガーデンテラス紀尾井町紀尾井タワー17階。都心を一望する眺望が広がる約1330㎡のスペースに、さまざまな形の椅子やデスクが並び、カフェやレストラン、キッチンも入る。社員はもちろんのこと、社員以外も手続きなしで利用できる仕組みだ。オープン以来、土日・平日を問わず人が集まり、連日さまざまなイベントも開催されている。プロジェクトを担当した植田裕司さんに、話をうかがった。

 

「利用者は社員が3割、社外が7割くらい。平日はランチのついでにここで仕事やミーティングをしている社員がいたり、土日は社外の利用で混雑しています。本当は半々くらいが理想だけれど、今は外部利用の人気が高くて、社員が少し遠慮している感じですね(笑)」

LODGE内のカフェ「CAMP17」。コーヒーなどのほか、パンなど軽食も販売。

人気の理由のひとつが、誰でも無料で利用できること(2018年6月現在)。好アクセスで電源・Wi-Fi完備、食事やドリンクの持ち込みも自由のスペースが無料で使えるとなれば、人気の高さもうなずける。また、できる限りセキュリティレベルを下げて、身分証を提示すれば事前予約無しで入館できるようにした。ここまで外部に開かれた場所を設けた理由は、「オープンコラボレーションスペース」として、社内外の交流を促すため。

 

「最近、よく『働き方改革』で議論されていることって、働く時間や場所についての制度面ばかりじゃないですか。でも、僕らが目指した新しい働き方は、社外との交流を活性化するために、『情報の交差点』を設けること。社内だけでは気づけない課題や解決方法を教えてくれるような人を巻き込む働き方にしていくための、拠点となるのが『LODGE』なんです。この場所自体が利益を生み出さなくても、ここから新しい事業が生まれてくればいいんです」

オフィス・経営支援本部コワーク推進部に所属し、サービスマネジャーを務める植田裕司さん。

「コミュニケーター」と「イベント」を呼び水に、社内外から人を集める。

新本社は全フロアがフリーアドレス化されていて、社員は基本的にどこでも自由に仕事をすることができる。LODGEにはカフェとレストランが設けられているため、社員が訪れるのは昼や仕事終わりの時間帯が中心。また、常駐する「コミュニケーター」が社員と社外を結びつける役割を果たしている。

 

「こういう取り組みでは、箱をつくっても交流が生まれないという話がよくありますよね。ここはコワーキングスペースですが、黙々と作業するのではなく、この場にいる人同士が話しかけ合って、共有できる状態をつくっていこうとしていますが、コミュニケーターはその役割を担っているんです。Slackのようなオンラインツールが社内にあって、コミュニケーターが社員向けにイベント情報を発信したり、利用者側には新しいサービスのテスト協力を募ったり。そういう仕組みも、徐々に整ってきました」

取材した日も、フロアの一角でイベントを開催していた。大学や企業の発表会からワークショップまで、その内容はさまざま。

社員と社外との交流を促すもうひとつの仕組みがイベントの開催。LODGEでは誰でもイベントの開催を申請することができ、審査を経て実施される。申し込み数は非常に多く、これまでヤフーが企画したものは3件、外部から提案されたイベントは1年間で600件以上。植田さん自身、需要の高さに驚いたそう。さらに、企業とのコラボレーションも徐々に増えており、2017年9月にはスイスの家具メーカーVitra(ヴィトラ)株式会社・みずほ情報総研株式会社と、2018年1月・2月には京都工芸繊維大学新世代クリエイティブシティ研究センター(NEO)と、いずれも「働き方」に関わる公開実験を行った。

「僕が面白そうだと思えば決裁するので、実現のスピードも早いですね。個人間の交流ももちろん生まれていて、ここで知り合ったエンジニアと意気投合して新たな技術を身に着けた社員もいますし、利用していた学生がヤフーに入社した例もあります。ヤフーの約6000人の社員一人ひとりが、LODGEでの出会いをきっかけに、例えばプラス100万円の付加価値を自分の仕事に見出せれば、それだけで60億円の利益になる。それこそがLODGEをやる意義なんだと思います」

ヴィトラ株式会社との取り組み「ジッケン オフィス」。IoTセンサを設置、コミュニケーション活性化を可視化する実証実験を行った。©ヤフー株式会社提供

ITの手法でつくった、変化していくワークスペース。

そもそも、LODGEのプロジェクトが始まったのは、当時副社長だった現CEOの川辺健太郎さんの「コワーキングスペースつくりたいよね」という一言がきっかけだったそう。植田さんは「Yahoo! JAPAN」のトップページの担当を兼任して、3年がかりのプロジェクトを主導。オフィス全体デザイン統括を担当した岡村製作所、LODGEを設計したFLOOATとともに、ウェブやアプリの開発手法でつくっていった。

 

「実はヤフーでは数年単位のプロジェクトってほとんどなくて、初めて成功した例だと言われました(笑)。僕らのチームはアプリのデザインとか開発をやっていて、スペースデザインは本業ではなかったので、あとで変えられるようにしたかったんです。壁も動かせますし、什器もすべてキャスター付きで動かせるようにして。運用が始まってからも、ユーザーに使い勝手を聞くよりも、実際の利用状況を数値で観察して改善を重ねています。ユーザーの要望って、基本的に自分だけに都合のいいものなんです。それが全体にとっての改善になるわけではありませんから」

設備も運用も常に変化していくことは「Hackable(ハッカブル)」というコンセプトワードでも表現されている。

たとえば、LODGE内のミーティングルーム。ユーザーのできるだけ長く使いたいという要望を叶えると、利用者と社員のコミュニケーションが生まれづらい状況になる。実際の利用状況を確認しながら、最適な利用可能時間を探っている。まず世の中に出して、実際の使われ方に合わせて調整していくやり方は、まさにアプリの開発と同じ。植田さんは、他社の事例をほとんど参考にしていないのだそう。

 

「僕自身にバイアスがかかってしまわないように、あまり他の事例を見ませんでした。忙しかったし、唯我独尊でやっちゃいました。経営陣も胸を張って案内しているので、怒らせてはいないと思います(笑)。僕は毎日エゴサーチをしているんですが、外部からの反応はすごくいいので、これからは社内向けのプロモーションを強化するフェーズになりますね。もともと、ヤフーでは目標を山に例えることが多いんです。山小屋を意味する『LODGE』という名前には、大きな目標に向かうための基地という意味を込めているんです。これからこの場所で生まれる新しい事業を積み上げていきたいですね」

space information

LODGE

オープンコラボレーションスペース

利用時間:9:00-21:00 (平日・土日共通)

料金:1Day利用 無料キャンペーン中 *予告なく終了する可能性あり

施設:オープンラウンジ、ミーティングスペース、レストラン、カフェ他

所在地:東京都千代田区紀尾井町1-3 17F

アクセス:東京メトロ永田町駅 9a出口直結
東京メトロ赤坂見附駅より 徒歩1分

東京R不動産の物件詳細情報ページへ
詳細な物件情報については、関連サイト「東京R不動産」の募集ページにてご覧いただけます。物件に関するお問合わせはリンク先ページにある、お問い合わせフォームよりお願い致します。
※ タイミング次第では募集が終了している場合があります。ご了承ください。