REWORK

新しい働き方 / 営み方を実践するメディア

ここで働きたい、やめたくないと感じる、会社と境目のない関係。

1996年に日本に進出して以来、コーヒーというカルチャーをつくり、広めてきたスターバックス。人手不足といわれる外食産業の中では、断トツの離職率の低さで知られている。その理由は、制度を充実させるいわゆる「働き方改革」ではなく、エンゲージメント(愛着心)を高める、さまざまな仕組みづくりにあった。

スターバックス ジャパンのサポートセンター(本社)1階には店舗も併設。

いつも、Mission & Valuesに立ち返る。

「スターバックスには、創業時から大切にしているミッション&バリューズというものがあります。ミッションとはチームが目指すゴールで、バリューとはそれを体現するための価値観や行動指針。いわば社訓のようなものなのですが、これがかなり浸透していて、何かあると必ず立ち返るようにしていて」

そう語ってくれたのは、銀座地区を担当するディスクリクトマネージャーの溝口大介さん。ちなみに、スターバックスのミッションは「人々の心を豊かで活力のあるものにするために――ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」。

バリューズは「お互いを心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります」など4項目。バリューを体現しているパートナー(=従業員)に、「Thank you」と書かれたメッセージカードを贈る「グリーンエプロンカード」という仕組みもある。

「なにより、人を育成することに価値を置いているんです。他の飲食チェーンだと、店長が商品開発やマーケティングをする場合もあるそうですが、スターバックスでは、そうした部分は本社の役割。だから、店長はお店をよくすることに集中できるんです」

スターバックス コーヒー ジャパン ディスクリクトマネージャーの溝口大介さん。

「店長ひとりではなく、社員や時間帯責任者、お店の全員でパートナーの育成を考えています。たとえば『自分がなりたい姿はなんですか?』という問いかけがあって、さらに『パートナーとお客さんにどんなふうに表現しますか?』という目標設定がある。それに応じた育成プログラムを設定して、上司だけでなく、同僚を含めて5〜6人で成長を見守り合うとか」

 

まずは、スターバックスの価値観に共感してもらい、「自分が大切にしていることをここなら表現できる」と感じてもらう仕掛けをいくつもつくっている。

他にも「グリーンエプロンクラブ」という社内SNSがあり、ここには現役のパートナーだけでなくOB・OGも参加。ミーティングの様子をUPしたり、活躍したパートナーを紹介したり、山登りなど趣味のコミュニティもあってカジュアルな話もできる。

「グリーンエプロンカードもそうですが、どれもパートナーのアイデアを引き出すという遊びをもたせています。自分たちで工夫できる余地を残しているのも、エンゲージメントが高まる理由のひとつですね」

Mission&Valuesが書かれた「グリーンエプロンカード」(左側)。

接客マニュアルなし、CEOともフラットな関係。

ちなみに、ここまでに何度も登場している「パートナー」とは、アルバイトも含めたすべての従業員のこと。さらに本社を「サポートセンター」と呼んでいるのも、主役はお店であるという考えから。

「ブランドマネージメントのチームだけがブランドについて考えるのではなく、パートナー一人ひとりがブランド。アルバイトまで含めて、全員でブランドをつくっていく。CEOだって、たまたま会社の経営をするという役割にいるだけで、私たちと同じパートナーの仲間なんです」

広報の酒井恵美子さんによれば、スターバックスの組織はとてもフラット。もうひとつ驚いたのは、接客マニュアルがないこと。もちろんドリンクのクオリティなど、ブランドに関わるものにはマニュアルがあるが、接客については、決められたことをするのではなく、それぞれが自分で考えて行動している。

スターバックス コーヒー ジャパン 広報部の酒井恵美子さん。

「どんなコミュニケーションするか、どうしたら喜んでもらえるかは、パートナーによっても、お客さんによってもさまざま。その人に合わせたサービスを、その場その場で考えて表現できる人になってください、ということ。ミッション&バリューズを自分の中に取り込んで、自分の表現としてアウトプットできるようになるかが重要ですね」

キーワードは「オーナーシップ」。自由度が高いぶん、最初は自ら考えて行動するのは難しい。それだけ成長したと実感できる瞬間は、本人だけでなく、周りのパートナーにとってもうれしい瞬間だと話してくれた。

「パートナー一人ひとりが自立しているところが、組織の強みであり武器になる時代になってきたと感じます。コーヒーがおいしい、居心地のよい空間、パートナーから元気をもらえる、だけじゃない。だからスターバックスに行きたくなるんだなって、ブランドとの価値観を感じて腑に落ちる瞬間が届けられたらいい。コーヒーを届ける先の価値を提示していきたいですね」

サポートセンターには、パートナーなら誰でも自由に使えるラウンジも。
スターバックスは1971年にシアトルで創業、世界70ヵ国以上に広がっている。
全国のチョークボードアートのスペシャリスト「GAHAKU」が自分のエリアをイラストで表現。
壁には、コーヒーの木から一杯のコーヒーができあがるまでが描かれている。

離職率は上がってもOK!?

「僕の担当していたお店でも、アルバイトに60歳の方を雇っていたし、さまざまな国、多種多様なバックグランドを持った人を受け入れています。人材難だから採用するんじゃなくて、そうした方針が他社との競争優位性にもつながると考えているんです」(溝口)

現在3万人ほどいるパートナーは、全体の6割を学生アルバイトが占めるため、当然入れ替わりは多い。一方で、社員の離職率は業界の中では断トツに低いそう。

「自分が大切にしているものを会社も大切にしているからここにいる、みたいな意識が強くあって。自己実現がチームで実現することと重なっていて、個人である自分とパートナーである自分に、境目がなくなってくるというか」(酒井)

遊びながら仕事をする、というのに近いかもしれない、という酒井さん。かつて働いていたパートナーからも「スターバックスでの経験がすごく生きている」とか「一番大切なことを教えもらいました」と言われることも多いそう。

「離職率が低いのはいいことで、もちろん長く働いてほしいけど、ここで得た経験を生かして次のステップに進んで活躍してくれることはすごくうれしいんです。私たちの価値観が社内だけじゃなくて、社会全体に生かせることが証明されているようで」(酒井)

「そういう意味では、離職率が上がってもいい。他の会社に行ったときに、さすがスターバックスにいた人だねっていう人材育成ができるのが理想です」(溝口)

1996年8月16日、東京・銀座にオープンした日本1号店。

お客さんとパートナーの境目もなくなったらいい。

最後に、それぞれが考える、これからの働き方やスターバックスの目指すものについて聞いてみた。

「今いろんなものの境目がなくなっているように、将来、私たちもコーヒーを販売するだけじゃなくて、別のことに使う時間が増えるかもしれません。もっと言えば、お客さんとパートナーの境目もなくなったらいい。この活動に参加したいから、そのときだけパートナーになるとか。そんなポジティブな未来をつくる人たちのプラットフォームになりたいし、なっているだろうなと思っています」(酒井)

「人を育てることも、お客さまにサービスすることも、フェアトレードすることでコーヒー農家さんやミルクを供給してくれる牛を守ることも。これから自分たちの価値観が活かせるフィールドは、広がっていくんじゃないかと思っています」(溝口)

2018年3月には、そうした想いを体験できるキャンペーン「YOU & STARBUCKS It’s bigger than coffee ポジティブな未来をつくろう」が、全国の店舗で開催される。さらに銀座では、スターバックスの活動を楽しく知ることができるプログラムや、未来のスターバックスの役割と可能性を考えるイベントも。

「ある店長さんの『スターバックスは心のインフラです』という言葉に、すごく共感していて。今はスマホで簡単につながれるけれど、人と人とがリアルにつながる時間や場所は少なくなっています。だから、これからもそういう場所を生み出して、育てていきたい。自分自身もスターバックスで働いていてすごく楽しいし、ここで働いてから、ちょっといいやつになったな、と思いますもん(笑)」(溝口)

「スターバックスの仲間は、人のポジティブな面を引き出すのが得意。そんなスキルを発揮する場所は限りなくあるんじゃないかと思います」(酒井)

 

event information

YOU & STARBUCKS It’s bigger than coffee ポジティブな未来をつくろう
東日本大震災の復興支援活動として2012年から継続している「ハミングバードプログラム」のほか、期間中には、ポジティブな未来をつくるスターバックスの活動をデザインしたスペシャルなペーパーカップでドリンクを提供する。銀座エリアではスペシャルイベントも開催。

期間:2018年3月8日(木)〜21日(水・祝)
実施店舗:銀座エリアでのイベントを除き、日本国内全店舗で実施

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