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暗闇での対話で体感したやさしさが、街とビルに溶け出す。

真っ暗闇の中、誰もが対等な状態で出会い対話する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。2017年9月に、外苑前から浅草橋へと新たに拠点を移したと聞き、お話をうかがってきた。現在入居するリノベーションされたビルや下町感のあるあたたかい街が、自分たちにはとても合っていたという。さて、その理由とは?

黒い幕の奥には、研修などが行われる暗闇が広がる。
profile

ダイアログ・イン・ザ・ダーク Tokyo Diversity Lab.
業種:ソーシャルエンターテインメント、企業向け人材研修
入居時期:2017年9月
スタッフ数:37名

感覚の可能性や思いやりに触れるソーシャルエンターテインメント。

光を完全に遮断した空間の中へ、グループを組んで入り、さまざまなシーンを体験するソーシャルエンターテインメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。暗闇の中では視覚障がい者がアテンドし、参加者は視覚以外の感覚の可能性やコミュニケーションの大切さを知ることができる。

1988年にドイツで生まれ、これまで世界41ヵ国以上で開催。800万人を超える人々が体験し、何千人もの視覚障がい者の雇用を生み出してきた、ダイアログ・イン・ザ・ダーク。日本では1999年11月に初めて開催され、東京・外苑前(2017年8月まで常設)と、大阪「対話のある家」を中心に、20万人以上が体験している。

「人の判断は80%以上が視覚情報によるもので、暗闇に入ると、ふだん使っていない他の感覚が広がり出します。脳が活性化して、みんな天才になる(笑)。それに子どもの頃、押入れに入ったように誰もが童心に戻れて、単純に楽しいんです」

ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表の志村真介さんと理事の志村季世恵さん。

他にない業態ゆえ難しい物件探し。縁があり、始まりの場所へ。

取材に応えてくれたのは、ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表の志村真介さんと理事の志村季世恵さん。2017年9月に外苑前から浅草橋へと拠点を移したが、なかなか理想の場所が見つからず、とても苦労したという。

「どんな業態でも普通は、ある程度場所が絞れますよね。建物の用途はおおよそ決まっているので、オフィスならオフィスビルだし、物販のお店なら商業施設や路面店だし。でも、我々の場合は特殊な業態なので、それがないんです」(志村真介さん)

そして、東京中をさんざん探した結果、たまたま現在入居する「ザ・パークレックス 日本橋馬喰町」と巡り会った。

「実は外苑前を拠点にする前、日本橋にダイアログ・イン・ザ・ダークの常設準備室があったんです。今回ご縁があってまた拠点を持つことになったので、戻ってきたなという感覚がありますね」(志村季世恵さん)

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク Tokyo Diversity Lab.」と名付けられたこの場所では、企業研修プログラムを中心に開催するほか、視覚障がい者の豊かな感性を活かした商品・サービス開発なども行っている。

参加者は「白杖」を使用し視覚障がい者のアテンドのもと暗闇を進んでいく。
印象的なロゴはクリエイティブディレクターの水野学さんによるデザイン。
視覚障がい者の繊細な触覚を生かして開発されたタオルや漆器などが並ぶ。
ウッディなインテリアが並ぶ空間は、暗闇から出るとホッとさせてくれる。

目の見えない人たちが生きやすい、あたたかい場所を求めて。

「(移転にあたって)一番の条件は、目が見えない人たちが生きやすい場所であることでしたね。具体的には、人のあたたかさや多様性のある雰囲気が感じられること。やっぱり熟成された街のほうが、それを感じやすいかもしれません」(志村季世恵さん)

日本橋馬喰町、浅草橋エリアには、江戸時代から問屋が立ち並び、個人店が多く、今も親しみやすい下町感が残っている。

「目の見えない人たちと中華屋さんに行ったらすぐに覚えてくれて、2~3回目には、メニューが出てくる代わりに『今日は麺がいい? 定食がいい?』って聞いてくれたんです。下町のあったかさが広がっていて、ここに来てからスタッフたちがすごく元気になったように感じます。なんというか街の色艶がいいんですよね(笑)」(志村季世恵さん)

街の雰囲気のほかに、川が近くにあったことも決め手のひとつ。暗闇から出てきた直後は五感が開いているので、都会の中でも自然を感じられて、ホッとできる場所がいいのだとか。

「川があって空が開けていて、ここに来てから夕焼けを見るようになった」と志村さん。

ネガティブな要素をポジティブに捉え直し、新たな価値を生み出す。

入居する「ザ・パークレックス日本橋馬喰町」は、元ブライダル用品のショールーム兼倉庫をリノベーションしたビル。志村真介さんは、この物件には、自分たちの考え方と共鳴する部分があると語ってくれた。

「世の中には、子どもだから、大人だから、障がい者だから仕方ないって考えてしまうことがたくさんあると思うんです。でも我々は、障がい者だから“こそ”、目が見えないから“こそ”できることがあるとポジティブに変換して、いろんなことに挑戦しています。物件も一緒で、古いから何もできないではなく、古いからこそできることがある」

元倉庫のため窓が少ないことも、暗闇をつくるのにはむしろ適していて、空間的にも、場所的にも、ダイアログ・イン・ザ・ダークのよさが生かされる。『Under Construction(工事中)』というビルのコンセプトも、これから新たなものをつくっていけそうだと感じた。

「今、我々はミュージアムをつくることを計画しています。そこでは『イン・ザ・ダーク』だけでなく、音のない『イン・サイレンス』、70歳以上の人が案内人する『ウィズ・タイム』といったプログラムも実施したい。どれもネガティブに捉えられがちな要素だけど、そこにある豊かなものを感じて対話ができる場。ダイアログ・イン・ザ・ダークは、海外ではオリンピックの関連イベントになることが多いので、2020年に向けて、ここで力を蓄えていきたいですね」

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