REWORK

新しい働き方 / 営み方を実践するメディア

みんなで食べる「みん食文化」でコミュニケーションを生む、新しいサービス。

IT系企業に充実した社食があったり、オフィス内のオープンキッチンでみんなで料理をしたり、現代のオフィスにおいて「食」は、ますます欠かせない要素になっている。そんなオフィスと食に関わる新たな取り組みを紹介していく当連載。第1回目に登場するのは株式会社キッチハイク。彼らが考える、これからのオフィスと食の関係とは。

「オフィスKitchHike」は、料理をつくる人(COOK)が職場を訪れ、手料理を振る舞ってくれるサービス。

食がコミュニケーションを深化させ、クリエイティビティを刺激する。

「KitchHike(キッチハイク)」は、料理をつくる人(COOK)と、それを食べる人(HIKER)をつなぐ地域コミュニティサイト。家族のような少人数型から10名以上のイベントのような形式まで、現在、月に150回ほどの食事交流会が開かれ、1,000人ほどのユーザーが一緒にごはんを食べている。さらに、2017年5月からは、COOKが職場に出向いて「手づくりごはん交流会」を開く「オフィスKitchHike」をスタートさせた。

代表の山本さんが、このサービスを始めたきっかけは、とある文化人類学の書籍にあった一節。そこには、「世界中どの民族も、異邦人がテリトリーに入ってきたときには、食事やお酒を振る舞って友好を深める習慣がある」と書かれていた。

株式会社キッチハイク共同代表の山本雅也さん。

「食卓を共にすることで交流を深める」普遍的な習慣を現代に、というのがKitchHikeの出発点。そんなコンセプトを実践するべく、キッチハイクのオフィスでは「お昼ごはんをみんなで手づくりして、全員で一緒に食べる」ことを日課にしている。

「社員が少なかった頃は、4人でカセットコンロを囲んで、鍋なんかをしていました(笑)。今は、社員やインターン生たちが20名弱分の食事をつくって、全員で食卓を囲んでいます」

キッチハイクでは、仕事後にみんなで飲みに行くことや、社員全員参加でイベントをすることはほとんどない。その代わり、毎日お昼に食卓を囲むことでコミュニケーションをとっているのだそう。

料理は社員やインターン生が日替わりで担当。その日オフィスにいるメンバーの昼食をつくる。
時間になったら食卓を準備。配膳は"給食スタイル"で、各自でお皿に盛り付ける。
全員が席についたら「いただきます!」。
この日のメニューは、車麩の竜田揚げに小松菜と厚揚げの炒め物、ナムルにサラダなど。暑い夏で疲れた身体を癒せるよう消化に負担のかかる肉類は使わずに。
後片付けは、じゃんけんに負けた人が担当。「片付けもコミュニケーション」だそう。

「一緒に食べる」という行為を通して得られるのは “阿吽の呼吸”。たとえばミーティングではわからなかったメンバーの変化に気づけたり、食事中のおしゃべりから互いの考え方が理解できたり。

「全員でお昼に食卓を囲むなんて、一見、ムダな時間にも思えますよね? でも、長期的な視点で見ると実はすごく合理的で、コミュニケーションコストの圧縮につながっています。他にも、定量的に計れるものではありませんが、チームビルディングやクリエイティビティにもいい影響があると実感しています」

五感で料理を感じ、食卓を囲んでリラックスする。お昼ごはんの時間で培われる”チーム力”が、最大のアウトプットを出すためのベースになっている。

取材当日、まかないを担当してくれた大野久美子さん。マーケティング担当のかたわら、COOKとしても活躍している。

届けるのは、「料理」ではなく「コミュニケーション」。

「オフィスって、10年、20年前は仕事をするだけの場所だったと思うんです。でも今はシェアオフィスが一般的になっているように、仕事をする場所というよりもコミュニティの形成や、人と人とがつながるための場所になってきています」

KitchHikeはリリースした当初、C to Cのサービスだと考えていたそう。それがあるとき、オフィスはいわゆる「B」ではなく「Cの集合」ではないかと気づいた。さらに自分たちがオフィスで手づくりごはんを食べる「まかないランチ」を始めたことが、「オフィスKitchHike」スタートのきっかけになった。

現在まで、オフィスKitchHikeを利用した企業は20社ほど。新人歓迎会や懇親会など、福利厚生の一環として導入するケースが多いという。

REWORKの事務局がある「Un.C.」で、オフィスkitchHikeを利用したときの様子。
メニューは、さばのエスカベッシェにぶりのアクアパッツァ、じゃことアーモンドの混ぜご飯。
盛り付けやセッティングもみんなで。ユーザーが参加するスタイルもオフィスKitchHikeならでは。

一般的なケータリングや、デリバリーサービス「UberEATS」、社食宅配サービス「オフィスおかん」などとの最大の違いは、「つくり手の顔が見える」こと。料理をつくる人が食べる人たちの前で自己紹介をし、つくった料理を紹介することで、自然なコミュニケーションが生まれる。

実際にREWORKでもオフィスKitchHikeを利用したところ、料理中のCOOKについつい「これから何ができるんですか?」と話しかけ、会話が弾んでしまう。料理というより、コミュニケーションそのものを届けていると感じた。

「あるCOOKが『KitchHikeの案件は、”お客様のために”と気負わず、自然に振る舞えるのがいいですね』と言っていました(笑)。目の前で料理をつくってもらえること、つくる側と食べる側の距離が近いというのは、幸せの度合いがすごく高い。僕らはその関係を、ジャズのセッションのようなものだと思っています」

 

キッチハイクのオフィスは基本的にフリーアドレス。デスク、テーブル、ソファなど、好きな場所で作業できる。

スタートアップにこそ、食事をつくる人が必要。

料理人はサービスを提供する側で、食べる人はお客様ではなく、フラットな関係で体験を共有するからこそ、自然なコミュニケーションが生まれる。

「今、オフィス環境にはパラダイムシフトが起きていて、個人がゆるやかにつながれる仕組みが必要とされています。オフィスKitchHikeはその流れにフィットしていると思うし、オフィスのみんなで食卓を囲むスタイルが広まってくれたらいいですね」

キッチハイクは、まだスタートしたばかり。そして自分たちと同じようなスタートアップやクリエイティブな業種こそ、オフィスKitchHikeを使ってほしいと山本さん。

「小さなチームこそコミュニケーションは密なほうがいいし、スタートアップはスピードが命だから、暗黙知のようなものを日常的に共有しておく必要がある。『ONE PEACE』のクルーに料理人がいますが、チームがしっかりワークするためには、食はやっぱり重要。チーム内に料理をつくれる人がいるだけで、すごく生産性が上がる。僕らがそのお手伝いをできたらうれしいですね」

Profile

株式会社キッチハイク
料理をつくる人(COOK)と食べる人(HIKER)が集まる交流コミュニティサイト「KitchHike(キッチハイク)」を運営。COOKを職場に派遣する「オフィスKitchHike」、レンタルキッチンサービス「みんなのキッチン」など食に関わる事業を展開する。

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