REWORK

新しい働き方 / 営み方を実践するメディア

コミュニケーションを生む、理想のオフィスキッチンとは

2018年、LIXIL、若原強さん(consulting & more / コクヨ)、REWORK(オープン・エー)の3社が集まり、オフィスキッチンのプロジェクトがスタートし、3社の共同開発によってオフィスキッチンのモデルプランが制作されました。

今回はそのモデルプランとオフィスキッチンの運用について、シンポジウムのトークセッションで話題となったトピックスを振り返っていきます。

原寸のモデルプラン

人と人が心地よくつながるオフィスキッチン

3社が提案したのは、社内外のコミュニケーションのハブとなるキッチンです。具体的に考えるにあたり、オフィスキッチンを導入している企業を取材・リサーチし、配置のパターンや得られる効果などを整理することから始まりました。

上図の分析を踏まえ、最も効果的なオフィスキッチンの在り方を考慮しながらモデルプランを検討していきました。

キッチンが置かれるオフィスの前提条件として、最もニーズが高いと思われるフリーアドレスのオープンイノベーション型ワークスタイルを取り入れている企業で、面積約1000㎡・社員数100名ほどの中規模オフィスを想定。キッチンをオフィスの中心に配置することで、新しいコミュニケーションの核となることを目指しました。上の図でいう、共用空間に隣接して執務空間とは分離されている「コモン型」の配置を想定しています。

キッチンの仕様として、オフィス利用において効果的な工夫をいくつか散りばめました。まず、そのサイズ感。カウンター幅4000m、奥行き1250mという大きなキッチンは、オフィスの中で存在感を放ち、人が集まりやすくなる最適なサイズであると考えました。

また、複数人で利用することが想定されるため、シンクは家庭用と比較するとかなり幅広なつくりです。水栓を2つ設置して2人が同時に作業できることで、自然と会話が生まれることを期待しています。

オフィスキッチンは、人が集まりコミュニケーションする場(コモンスペース)だけでなく、個人がモードを変えて作業する場(パーソナルスペース)でもあります。その両立を目指して、目線の交差をコントロールするための高低差をつけ、個人のスペースを確保しながらも、会話のきっかけを生みやすい対面距離がとれる寸法設計をしています。

以上の検討を踏まえてモデルプランが制作され、全国4ヶ所でシンポジウムが行われました。

LIXIL、若原強さん(consulting & more / コクヨ)、REWORK(オープン・エー)のメンバーが集い、プロジェクトを振り返った。

オフィスキッチンの展示を終えて

石原(LIXIL) オフィスキッチンのモデルプランが出来上がってみたら、かなりの大きさで驚きました。オフィス内でみんなの目に止まるためには、この位の大きさは必要だということがわかりました。お客様からもサイズ感や対面の距離感について共感する声をいただきました。

中村(LIXIL) シンポジウムは東京・名古屋・大阪・福岡で開催して、それぞれでオフィスキッチンにまつわるアンケートをとったところ、大阪での反響が一番大きかったのが印象的でした。

若原(consulting & more / コクヨ) それは面白いですね。食事を大切にする大阪の気質に繋がったのかもしれませんね。

石原 シンポジウムではフリートークの時間があり、実際の運用について多くの質問がありました。オフィスでの料理は誰がつくるのがいいのか、という質問があがりましたが、オープン・エーではどうでしょうか?

馬場(OpenA) はじめは料理に慣れた人から使い始めてもらい、今ではみんなが使える雰囲気ができました。社員がいかにキッチンを回していくかが大切です。これまで無口だった男性スタッフが実は料理が得意で、いつの間にか人気者になりプロジェクトリーダーになった事例もあります(笑)。一緒に飲食することで、家族のような関係になれるのも大きいですよね。

石原 オフィスキッチンにはあたたかい空気感がありますよね。今回の共同研究プロジェクトのために、オフィスキッチンを導入している企業を取材しました。そこで印象的だったのが、愛のあるコミュニケーションがオフィスキッチンにはあるということで、キッチンがうまく使われているオフィスには、寮母さんのような存在があったんですよね。

馬場 オープン・エーにはプレイスマネージャー(PM)という役割を置いていて、小さな企画を立てて料理をする機会をつくったり、お裾分けの合図をしたり、キッチンを活性化させています。もしかしたら寮母さんにも近いのかな。PMの存在はキッチン周りだけでなく会社としても重要で、社内だけでなく、社外とのコミュニケーションも促す役割を担うこともあります。

consulting & more / コクヨ株式会社 若原強さん

石原 金銭面での運用の話も出ましたね。どんな風に飲み物を提供していくのか。

若原 コクヨでは、自分で豆から挽くコーヒーを無料で提供しています。

馬場 オープン・エーでは最初はコーヒーを無料にしていましたが、過剰摂取を避けるために現在は50円の募金箱を用意しています。100円だとコンビニへ行ってしまうので50円。「絶対に払え」ではなく、「できるだけ払いましょう」というLet’sのルールが良さそうです。

石原 LIXILの本社オフィスではキッチンを導入するフロアが増えましたが、実験的にグローエの炭酸水栓を無料で設置したところ、他のフロアからも炭酸水を求めて人が集まるようになりました。大規模なオフィスになると、なかなか全体が集まる場所をつくることが難しいという課題があるので、このようなアイテムの導入もいいかと思います。

若原 人を集めるには動線もポイントになりますよね。コクヨの場合は左右対称に分かれたワークスペースを繋ぐ導線上にドライキッチンを配置し、先ほどの無料コーヒーやお菓子の販売スペースを設けています。コーヒーやお菓子を求めてきた人と、ワークスペース間を移動するために通りがかった人との交流が良く生まれているのを目にします。

左から、株式会社LIXIL 伊藤愛さん、中村治之さん、石原雄太さん

石原 水周りのメンテナンスや運用ルールについても話題に上がりました。これも今回のモデルプランにあった「みんなが目に付く所にキッチンを置くこと」がヒントになってきます。

若原 人が集まりやすいということは、人目に付きやすいということでもありますね。そうすると汚しっぱなしにしたり、適当なことはできないというモラルが働くのではないでしょうか。

馬場 オープン・エーでは、PMがキッチン周りの面倒を見ていますが、人目につくところにあることで、みんながそれを手伝う雰囲気になりますよね。

石原 取材先でも総務担当者が兼務して、キッチンを管理している様子がありましたね。

左から、REWORK(オープン・エー)の大橋一隆、馬場正尊、塩津友理

石原 これからの目標として、オフィス以外の建築用途も含んだ、様々な公共空間における「パブリックキッチン」について考えていきたいと思っています。ユニバーサルデザインやインクルーシブデザイン(高齢者、障がい者、外国人など、少数派ニーズにも応えるデザイン)の視点も取り入れながら、開発の検討をしていきたいです。

若原 妄想が広がりますね。

 

後編(パブリック化するキッチンの未来を考える)へ続く

東京R不動産の物件詳細情報ページへ
詳細な物件情報については、関連サイト「東京R不動産」の募集ページにてご覧いただけます。物件に関するお問合わせはリンク先ページにある、お問い合わせフォームよりお願い致します。
※ タイミング次第では募集が終了している場合があります。ご了承ください。