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米国で広がる、コワーキングスペースと小売との異色コラボ

コワーキングスペースは、2005年に米サンフランシスコで初めて創設されて以降、起業やフリーランス、テレワークなど、働き方の多様化に伴い、新しい共働型オフィスとしての地位を確立してきた。

コワーキング専門メディア『deskmag(デスクマグ)』によると、コワーキングスペースは2012年時点で1779カ所に設置され、2018年末までに世界全体でおよそ170万人が1万9000カ所のコワーキングスペースを利用する見込みだ。

コワーキングスペースは、利用者ごとに空間が仕切られている従来のシェアオフィスやレンタルオフィスとは異なり、オープンなスペースを共有し合いながら、日常的にコミュニケーションしたり、定期的なイベントで交流を深めるなど、リアルな場を通じたコミュニティの醸成に重点を置いているのが特徴だ。オフィスコストの節約や機能面での利便性だけでなく、利用者間のコラボレーションやイノベーションを後押しする環境づくりが差別化要因のひとつとなっている。

近年、コワーキングスペースの世界的な普及に伴って、その形態も多様化しつつある。とりわけ、“コワーキングスペース先進国”の米国で広がりはじめているのが、コワーキングスペースと小売店鋪の融合だ。

大手不動産会社「Macerich(マセリッチ)」との提携が明らかとなった「Industrious(インダストリアス)」のコワーキングスペース © 2018 Industrious. All rights reserved.

大型ショッピングモールにコワーキングスペースが入居。小売業界の実験の場に

2018年8月には、米国の大手不動産会社「Macerich(マセリッチ)」がコワーキングスペース運営会社「Industrious(インダストリアス)」と提携し、マセリッチが運営する大型ショッピングモールにインダストリアスのコワーキングスペースを入居させることを発表した。総合不動産サービス企業のJLLでは、「2023年までの5年間に年平均25%のペースで拡大する」と予測する。

米サンフランシスコ中心部の大型ショッピングモール「Westfield San Francisco Center (ウエストフィールド・サンフランシスコセンター)」で2015年5月に開業した「Bespoke(ベスポーク)」は、その先駆的存在だ。200以上の小売店や飲食店が入居し、年間20万人以上が来店する“地の利”を活かし、小売り事業にITやIoTの最新デジタル技術を導入する“リテールテック系”と呼ばれるスタートアップ企業と小売業者、一般消費者をつなぎ、小売業界におけるイノベーションを推進するプラットフォームとしての役割を担っている。

ベスポークは、コワーキングスペースとイベントスペース、デモスペースという3つの要素で構成されているのが特徴だ。

コワーキングスペースには、75社以上のリテールテック系スタートアップ企業が入居し、デジタルサイネージ、ウェアラブル端末、モバイル決済サービス、次世代型ECソリューション、小売業向け店舗解析ツールなど、デジタルテクノロジーを活用した様々なソリューションやサービスの研究開発に取り組んでいる。

床面積は1万4000平方フィート(約1302平方メートル)で、オープンな空間に広がる執務スペースを中心とし、時間制で利用できる会議室、共用ラウンジ、キッチン、図書室のほか、壁面には気軽にエクササイズできるボルダリングウォールが設置されるなど、創造性と生産性を高めるための機能や仕掛けが備わっている。また、会議室の一部は400平方フィート(約37.2平方メートル)の小型店舗に転用できる仕組みとなっており、期間限定のポップアップ・ストアで、このコワーキングスペースで開発したプロダクトを一般の来店客に販売することも可能だ。

1万8000平方フィート(約1674平方メートル)のイベントスペースは、30名程度のセミナーやワークショップから1200名規模の大型カンファレンスや展示会まで、多目的に利用できる。サンフランシスコの中心部というアクセスの良さも魅力で、開業初年度には、グーグル・ベンチャーズやアドビシステムズといった優良企業を含め、50以上ものイベントが開催された。

また、一般の来店客も数多く往来する5000平方フィート(約465平方メートル)のデモスペースは、スタートアップ企業と消費者との貴重なタッチポイントだ。大型タッチパネルモニターなどを使って、デジタルテクノロジーを駆使した新しい商品やサービスを広くデモンストレーションでき、テストマーケティングやプロモーションに役立てられている。

WeWork205ハドソンストリートのコワーキングスペース © WeWork

小売のサービスでスタートアップ企業とオフィス会員をつなぐ

世界96都市に485カ所の共働型オフィススペースを展開し、2018年には日本に進出したことでも話題になった「WeWork(ウィワーク)」でも、小売業を融合させた新たな試みに着手している。

2018年6月、WeWorkの会員のみが利用できる“メンバーによるメンバーのための店”として「WeMRKT(ウィマーケット)」の第一号店が米ニューヨークのウィワーク・205ハドソンストリートでオープンした。有機栽培バナナを原料とするヘルシーなスナック菓子「Barnana(バーナナ)」や規格外の野菜や果物を活用したジュース「Misfit Juicery (ミスフィット・ジューサリー)」など、2018年4月に実施されたWeWorkのコンペティションで選ばれた10種類の商品が販売されている。

ウィマーケット第一号店 © WeWork

WeWorkでは、オフィススペースを日常的に利用する会員へのサービスのひとつとして、スナック菓子やドリンク、日用雑貨などを24時間年中無休で販売する無人店舗「Honesty Market(オネスティ・マーケット)」を運営してきた。ウィマーケットは、オネスティ・マーケットの仕組みを応用し、スタートアップ企業とWeWorkのコミュニティをつなごうという試みだ。

美味しくヘルシーなスナック菓子やドリンク、デザインと機能性を兼ね備えたオフィス備品、最先端のデジタルガジェットなど、最新トレンドに敏感なWeWorkの会員が楽しめる目新しい商品やサービスをいち早く届けると同時に、スタートアップ企業の販売・プロモーションの新たなチャネルとしての役割も担っている。WeWorkでは、四半期ごとにコンペティションを開催し、ウィマーケットで販売する商品を定期的に入れ替えていく方針だ。

「スペースアス」のコワーキングスペース © Spaceus
築100年以上の変電所跡をリノベーションした「スペースアス」© Spaceus

コワーキングスペースから、地域のものづくりを発信

共働型オフィスと展示・販売のためのギャラリーという2つの機能を共存させ、草の根のアプローチから地域コミュニティの多様な創作活動をサポートする試みとして、米ボストンで地元マサチューセッツ工科大学(MIT)の卒業生が2018年に開設した「Spaceus(スペースアス)」も注目されている。

1911年に建設された変電所跡の遊休不動産をリノベーションしたスペースアスでは、地元のアーティスト、作家、デザイナーらがともに創作活動に取り組み、それぞれの作品を展示したり、販売したりできるのが特徴だ。2018年7月には、女性の作り手が一堂に会するクラフトマーケットを開催するなど、地元住民とアーティスト、作家、デザイナーらをつなぐ場となっている。

「スペースアス」で開催されたクラフトマーケットの様子 © Spaceus

コワーキングスペースと小売との融合は、新しい商品やサービスを開発するスタートアップ企業から、自分の作品を広く届けたいアーティストや作家、デザイナーまで、あらゆる“ものづくり”にかかわる人々から幅広いニーズが見込まれている。

コワーキングスペースは、もはや働く場にとどまらず、新しい商品やサービスと出会い、開発者や作り手と直接つながることのできる場としても活用されていきそうだ。

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